weiwei創刊・夜会とは何か?

我が兄弟そしてエマルで『weiwei』という雑誌を死力を尽くし無理矢理の完成、自費出版という形ではあるけれど8月18日に発売、9月1日に刊行記念イベント「僕たちの失敗」を敢行。
夏の前半は知久寿焼さんとのツーマンライブ、後半はweiweiという2つのビッグイベントに追われ、忙しいことは有り難いことではあるが新しいことや慣れぬことが目まぐるしく続き、我が兄弟エマル共々体重がそれぞれ8kgほど減少、エマルは疲れ果てた挙句に半透明になり、弟は夏の前に比べて歩くスピードが100分の1ほどになっていたが、「我が夏に悔いなし」とそれぞれが思っていることをそれぞれの真っ直ぐな瞳と真っ黒に日焼けした肌を見て実感したのだった。

そして、weiweiでも特集した「パブリックスペース研究」の大垣さんとはweiwei出版後もweiweiとは関係なく、お互いに研究を続けている。
パブリックスペースの研究のほとんどは大阪で鍼灸家(正しくは鍼灸あん摩マッサージ師)の大垣さんと二人で行っていた。
パブリックスペースについてはweiwei本編で説明しているのでそちらを参照してほしいが、大垣さんとは同じ接骨院で働いていたことから仲良くなり、仕事帰りにパブリックスペースの研究を行うようになった。
「パブリックスペースの研究」とは簡単に言うと、「街の隙間に誰のものでも無い場所が絶妙な居心地で存在している」というのを探しそこでお茶(日によっては飲酒)をするというものである。
本来は外で飲食しても良いのは花見シーズンの決められた場所と決まっている訳ないし、しかも誰の迷惑にもならない「よかったらあなたもどうぞ」というような場所が街中にあるはずだという研究である。
そして「ちょっと友人と話したり休憩したりすることだけで何千円も使ってられるか」という我々の強い思想でもあった。
さらに簡単に言うと「探せばお金をかけずにゆっくりできる場所が街中にあるよ」ということである。
「パブリックスペース」の見つけ方やルール、そしてそのパブリックスペースでの会話はweiweiに細かく特集しているので是非読んでほしいのだが、パブリックスペースでの会話を我々は「夜会」と呼んだ。
つまり、そこで「何を話すか、会話によって何が生まれるか」ということがとても重要であり、会話の果てにお互い知らなかったイメージに行き着く可能性が日々楽しく行いっていた。
そして、夜会での会話を我々は恥ずかしながらフリージャズに見立てて「セッション」と呼んでいる。(人に説明してて恥ずかしいので近々改名予定)

この夜会自体は僕が東京へ引越してもLINE通話にて時々開催している。

先日はこんな発見があった。
大垣さんは鍼灸家になる前は20代のほとんどんどをバックパッカーとして世界中を旅して回っており、その経験からあらゆる発見をしている。
その日、色々な世間話をした後大垣さんは「いやー、国を回ってだんだん気づいたんだけどね……フランス人には勝てんわ」と切り出した。
「芸術、建築、社会制度、あらゆるシステム、経済、ついにはワールドカップまで勝ってさあ」
と続けたのである。
つまり、「結局フランス人が勝つ、及び大概は日本人は勝てない問題」である。
私は急に始まったフランス問題に早く続きが聞きたくて、
「芸術家に対してもですが社会の姿勢が日本とはまるで違いますからね」
と慌てて答えた。

「そうなんだよ。何でもフランス人が上なんだよ。戦争も芸術もサッカーも。全部上を言ってるんだよ昔から」
「なるほど。日本人は昔から、おフランスって言ってますからね」
「そうだね。お、をつけるほどリスペクトしてたんだろうね、おアメリカとかおイギリスは言わないもんね」
「おフランスって呼んでる時点で丸腰で負けてますよね」
「本当だよ」
「いやー、フランス行ってみたいですけどね、もう東京の家引き払って行ったろかなとか時々考えます」
「駄目だよ、南君はもう少し東京で頑張らんと、まだやり尽くしてないわけだから」
「何でしょう、金もかかるし存在するだけで金がやたらかかるってどうなんですかね」
「それはね、実は前から思ってたけど僕ら田舎者はその点では不利だよね、地元が東京で東京で生活するために頑張らなくていい人が、スッとうまいことできるわけだからね」
「それはありますね、単純に家賃稼がないでいいし金もあるとなると、落ち着いて好きなことできますからね」
「ほら、例えばミュージシャンとかがお洒落なアーティストって感じでやっても、最初から東京に生まれ育ってる人の方が都会的で頑張ってる感が無くてお洒落だもん、どんだけお洒落な感じにしても必死さがどうしても拭えない田舎者には分が悪いよ」
私は大垣さんの話を聞きながらだんだん落ち込んできていた。
この元も子もない希望の無さに、頭の中で北の国からの純君が「大垣さんの言う通りだった。」と薄暗くつぶやいているようだった。

「いやー、まさにそうなんですよね。どうしたらいいんですかね…」
「東京のルールで東京人と戦っても中々勝てんよ、だから…」
大垣さんは言った。
「山の手言葉とか使い始めたらいいんじゃないかな。」
「どういうことですか?」
「ほら、東京じゃなくて江戸を見てますというか」
「御免あそばせ、とか使うんですか?」
「そうだ!そうなんだよ!東京は無視して江戸を生きてますと。江戸で勝負すればいいんだよ」
「なるほど、もうビルが立ち並んで富士山見えなくても富士見橋とか書いてたら富士山を見上げると」
「そうそう!東京でしかも東京ルールで勝負する人は山ほどいるわけだから、で結局サチモスとかスプツニ子が勝つ訳だから」
「こっちは江戸でやってますんでと」
「そうだよ!これ南君の一人勝ちだよ!これで東京レペゼンのラッパーがフリースタイルしてきても…」
「それで蕎麦が美味くなんのかい?と」
「もうマスターしてるじゃないか!」
「あははははははは!」
「あっはははははは!」

私は自分の江戸っ子の習得の早さに我ながら自分が誇らしかった。
「南君、江戸を学びに江戸へ留学して来てますって言ってた方が潔良いかもね、みんな背伸びして東京ルートやってる間に、留学生ですけど?みたいな」
「忍者のTシャツとか着るべきですかね」
「そうだよ、それで東京については知りませんが、江戸に留学生してきましたと」
「そしたら東京の景色もやたら楽しいですね」
「これは、東京に迷ってる人を集めて団体にした方がいいんじゃかいかな、ほら都会の孤独に悩んでる若者とかも仲間に入れて…あんなのも江戸知らないまま東京だけでやろうとするからだよ」
「いやいや、あなた悩んでるけどここ江戸ですよ!と」
「それで江戸に詳しい年配の人も会員になってもらって、色々教われば江戸に詳くなるしご隠居さんみたいなのも見つかるし一石二鳥じゃん」
「いいですね!全員が24時間常にブラタモリという」
「これは、組織に名前がいるよね……何か粋な団体名……お江戸倶楽部とかどう?」
「お江戸倶楽部!絶妙にダサくていいですね!」
「お店とか始める人とかは皆一回は考えるけど、誰も言ってないんじゃないかなお江戸倶楽部」
「めっちゃいいですね!古いピンサロとかにありそうですが、これシンプルにど真ん中過ぎてほとんど無いんじゃないですかねお江戸倶楽部!」

調べてみるとまさに東京にお江戸倶楽部というものは渋谷に和風コスプレ写真館の一軒だけしかなかった。
つまり「東京都お江戸倶楽部」と手紙を出せば写真館か私の所のどちらかに届くのである。
急に東京での生き方に明るい未来を感じ、大垣さんもこれ以上無いであろうベストな命名に誇らしそうであった。
そして、2011年の震災以降東京へは行かないと決めていた大垣さんであるが、「これは東京行ってもいいかもって思えてきたよ」とこのお江戸倶楽部の発明により価値観が揺らぎ始めたことを告白し始めるまでになっていた。
そこで私は雷に撃たれたような重大な発見をしたのだった。

「大垣さん!これまさかとは思いましたが……」
私はやや緊張しながら続けた。

 

 

 

 

 

 

「お江戸、『お』がついてますよ」

 

 

 

 

 

 

この新発見に私も大垣さんも正気でいるのがやっとであった。それはまさに博士と助手が長い月日顕微鏡と試験管を見つめ続けた先に新発見をしたような瞬間であり、これが度々訪れるのが夜会の醍醐味である。

「元々リスペクトの『お』がついてたんだよ日本には!」
「維新そして敗戦で完全に『お』を外されて、『お』は後から入ってきた先進国に取って代わったんですね」
「すり替えられてるんだよ!『お』をつけて良いのはフランスですよって。おフランスと戦えるのお江戸しかないわ!『お』を外されてる東京じゃ絶対勝てないわ!」
「だって『お』が無いですからね!」

お江戸倶楽部の発足と、『お』の有無の大発見に我々はお互いを褒め称えその日の夜会は終了した。
このように夜会は日々続いている。

そしてつい先日、私と弟が毎週出演している埼玉のFMラジオ『ご近所さんの気楽なステージ』にweiwei出版記念として、大垣さんにLINE通話で中継し、大阪からゲスト出演してもらった。
私はいつもパブリックスペースで行なっていた夜会の空気を、小規模であれどラジオとして形になったことがとても嬉しいのだが、放送を聞いた大垣さんは「あれはいかんよ。ストロングゼロ飲み過ぎてたから後半僕の話は無茶苦茶やないか」と言っていた。

しかし、最近大垣さんから「CMの話でも来てるのかな」と思うほどストロングゼロという単語をやたら聞くが、「チューハイ」ではなく「ストロングゼロ」と商品名をはっきり言うあたり深いこだわりがあるか、大人の事情があるのだろう。
実際にストロングゼロと何度も聞いたらやたらとストロングゼロが飲みたくなり、生涯初めてストロングゼロの購入をして、一人飲みながら大垣さんの回を聞いたらやたらストロングゼロ美味しかった。
発明の味、ストロングゼロ。
お江戸の嗜み、ストロングゼロ。

ラジオ『ご近所さんの気楽なステージ』はYouTube版もアップされているので是非。

そして、私共はお江戸倶楽部の新しいメンバーを募集しております。

『FMラジオご近所さんの気楽なステージ・木石南×大垣正樹の回・YouTube版』
https://m.youtube.com/watch?v=2NMnMCasd3w

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