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KBE文化功労賞に漫画村がノミネート

漫画村という素晴らしいサイトの歴史が終わった。

ネットを見ていると、賛否両論ではなく、かなり圧倒的に否が多かったように思う。
漫画村は悪だ、というわけだ。
多かった意見は、
・海賊版サイトが漫画という文化を滅ぼす
・アーティストが食べていけない
・時間と労力をかけてできた作品を第三者が金儲けに使うのはおかしい
というような感じだった。
そして政府はサイトブロッキングという緊急措置に踏み切ったわけだけど、
Kiishi Bros. Entertainmentは、これらの事態において、
漫画村というサイトの功績を讃えて、正当に評価されるべく、
KBE文化功労賞のノミネートに急遽、漫画村を加えることに決定した。
KBE文化功労賞
主催:Kiishi Bros. Entertainment
ノミネート:漫画村
ノミネート理由
「テクノロジーと権利問題の隙間に勇気をもって取り組み、かつ漫画文化を民衆と密接なものにした」
ぼくは漫画村を初めて利用したとき、すごく便利で素晴らしいサイトができたなあと感心していた。
ぼくはここで浦沢直樹の『ビリー・バット』や、西加奈子『サラバ!』を読んだ。
こういう海賊版やパクリなんかの問題が浮上するときに、ぼくはいつも、
著作権が本当に一体誰のための権利なのかと考えてしまう。
漫画村は月に1億7000万ものアクセス数を記録しており、ユニークユーザー数は750万を超えていたらしい。
これは日本の中高生を足した数よりも多い。
さて、この数字は圧倒的に多い。
海賊版が一切存在しなかったとして、これだけの人が漫画を購入することはない。
月に1億7000万ものアクセスを漫画村が稼いでいる一方で、YouTubeはそれ以上のアクセス数を稼いでいる。
テレビ局はもちろんYouTubeに違法な動画がたくさん溢れていることは知っているし、
漫画村以上の経済効果があることは容易に想像できる。
それに、XVIDEOSはもっとアクセス数が多い。
これは言わずと知れたポルノサイトだけど、
もちろん、これにも違法な動画がたくさんある。
違法な動画というのはもちろん著作権を侵害したもののことだけど、それだけじゃない。
いわゆるリベンジポルノがあり、これは肖像権侵害であり、名誉毀損、侮辱罪にあたる動画だ。
それから児童ポルノがある。児童ポルノはまさしく漫画村と同じサイトブロッキングの対象だが、
XVIDEOSでは、児童ポルノが現れては削除されることを繰り返している。
漫画村は驚異的なアクセス数を記録しているけど、
実はXVIDEOSの方がアクセス数は多い。というか、主要なポルノサイト
XVIDEOS、PornHub、エロタレストの、3サイトが、
どれも漫画村よりも多くアクセス数を稼いでいる。
XVIDEOSの違法アップロードは、ポルノ産業を衰退させないか?
XVIDEOSの違法アップロードによってアダルトビデオ製作会社が儲からないのではないか?
AV女優や製作会社が苦労してつくった作品を、第三者が勝手にアップして広告費を稼ぐのはおかしいのではないか?
しかしXVIDEOはサイトブロッキングの対象にはなっていない。
話を漫画村に戻そう。
海賊版のせいで漫画という文化が衰退するという意見をよくきくけど、
同じ様な議論を一昔前、テレビはYouTubeに対して言っていた。
Music Videoだって、レーベルは絶対にフル視聴できるようにはしていなかった。
しかし今やどうだろう?
それに、もし文化が衰退するとしても、それは「海賊版」だからではない。
それはスティーヴン・ウィット著『誰が音楽をタダにした?』のヒットでも明らかだ。
つまり、ここでの問題はサブスクリプションというシステム、つまり無料で聴き放題、読み放題、というものが原因で文化が衰退する、ということであって、違法か合法かは関係ない。
なぜなら、超超合法的なサービス「Spotify」によって、アーティストに全然お金が入ってこないということはすでに多くの人が指摘していることだからだ。
今までと同じ様な方法論でお金儲けができないということはとっくにわかりきっているし、
音楽業界や映像の方ではそれに必死で食らいついている。
しかし出版はどうだろう?
作品が無料で手にはいることが当たり前になると、
例えば江川達也氏がいうような、
「クオリティ(もしくは規模)の小さな作品しか生まれなくなる」
という危惧は杞憂だとぼくは思う。
リバタリアンのバトラー・シェーファーがいうように、
アイスキュロス、ホメロス、シェイクスピア、ダンテ、ミルトン、ベートーヴェン、バッハ、モーツァルト、ワーグナー、チャイコフスキー、ゴッホ、ミケランジェロ、ダヴィンチ、レンブラント、ルノワールのようなアーティストは著作権の恩恵には預かっていない。
創作のインセンティブが著作権と関係ないことは、ちょっと考えてみればわかる。
お金儲けをするために芸術作品をつくる人がいたら、それは相当に頭を整理できていない非現実的な人だろう。
お金を儲けるためにもっと手っ取り早い方法はたくさんあるにも関わらず、極めて稼ぐことが困難な芸術作品を作り続ける人のインセンティヴとは何だろうか。
史上最も長い小説を書いた(よってもっともインセンティヴがあったと言い換えても良い)ヘンリー・ダーガーは、死ぬまで著作権法によって守られはしなかった。
ヘンリー・ダーガーの作品は、歴史上最も規模の大きな小説だと言い換えることもできる。
それに、作品のあり方は常に変化する。
奴隷制を廃止するときに、「もうピラミッドのような巨大な作品は生まれないだろう」と憂いても仕方がないし、「奴隷貿易業者が困るだろう」と憂いても仕方がない。
少なくとも、漫画村のサイトブロッキングによってハッピーに思える人っていうのは、
日本中にいるたくさんの漫画家の中でも、ほんの一握りの「売れている漫画家」でしかない。
たとえば新人作家や、売れていない漫画家、もう故人となって絶版となっている漫画家はどうだろう?
絶版になって、なおかつ著者は亡くなっており、遺族とのコンタクトもとれない、
よって出版不可能だと思える作品(孤児著作物)が、
ネットで無料で読めるとして、誰が損をする?
全く売れない漫画家がいて、まだ一冊も出版したことはない、もしくは一度だけ出版したことがあるが、すぐに絶版となってしまったような人。日本中どこの本屋にいったって彼の作品は読むことができない。
それが、月に1億7000万ものアクセスを稼いでいるサイトに掲載されたとしたらどうだろう?
著作権法の名の下に、誰を守るのか?
それは、一握りのすでに売れている漫画家にすぎないし、それにしたって、本当に守れているのか怪しい。
YouTubeを考えてみよう。
YouTubeは、全く売れていない新人のアーティストでも、Music Videoを公開することができる。
一方で、すでに売れているアーティストもMusic Videoを公開する。
売れているアーティストも新人アーティストも、お互いにハッピー。
漫画村の違法性について考えてみよう。
ぼくが古本屋をオープンするとしよう。
その本屋は、全国に何百万箇所も支店があって、全国どこにいても、客は立ち寄ることができる。
その古本屋では、立ち読みをしても怒られない。
全国の支店を合わせると、一ヶ月で実に1億7000万人もの来店があるのだ。
その古本屋では誰も本を買わないが、みんな立ち読みする。
たくさんの支店があるので、
出勤するときには最寄りの駅付近の支店に入って立ち読みして、
会社についたら会社のそばにある支店で本の続きを読み、
仕事の休憩中はカフェの中に併設された支店で続きを読む。
立ち読みで全巻読み終えるのだ。
この古本屋は、広告掲載によって運営されている。
現在、本屋での立ち読みはもちろん許されている。そこで全巻読み終えることも。
漫画村は、著作権法を無視しているがゆえに、
出版社の垣根を超えて幅広いジャンルの作品を読むことができた。
現状では、こうした便利なシステムは合法的に実現不可能だろう。
なぜ、法整備によって、より不便にしていく必要があるのだろう?
漫画を便利に読むことができるということは、すなわち漫画の文化の発展とはいえないのか?
文化が衰退するというのは、その文化が生活から離れていることをいうのだ。
たとえば歌舞伎や能は国によって保護されているが、
一体、どんな若者の生活に歌舞伎が密着している?
中高生のうちの何パーセントの人が、毎日歌舞伎をみにいくのだろう?
これこそが文化の衰退に他ならない。
無料だとか、作者が金儲けできないとか、そういうことは関係ない。
だって、歴史上最も芸術が花開いた例として陳腐なくらいベタな例を出せば、
ルネッサンスの時代に、著作権によって保護された芸術家というものを考えてみよう。
著作権は度々、強化される。
なんども法律が改正されている。
改正される度に、作品の数は増加したか?
いや、その度に作品の数が減ったというデータすらある。
米国で著作権による保護期間を延長することでディズニーを守るという意味がどこにあるのだろう?
とはいえ、漫画村は終わってしまった。
素晴らしいサイトだった。
おそらく漫画村が著作権法上問題があったということは明らかだろうし、
現行法上問題のあるサイトをこのように擁護すること自体問題なのかもしれないけれど、
ぼくとしては、
1、漫画村は文化を発展させた
2、違法と知りながら勇気を持ってそれに取り組んだ
3、漫画村のブロッキングはユーザーにとっては不利でしかない
4、漫画村のブロッキングは売れていない漫画家や孤児著作物、新人漫画家にとっても不利でしかない。売れているアーティストだけが擁護されるが、それも前時代的な擁護にすぎず、果たして真の意味で特をするのかわからない
5、漫画村以上にアクセス数や違法性の高いコンテンツを有していると思われるXVIDEOSやYOUTUBEは無視されているか、むしろ賞賛されている
ということを踏まえて、今回のノミネートにいたった。
ここに、KBE代表として、さらに著作者の端くれとして、漫画村の運営者らの勇気ある行動を讃える。

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